僕はパッとしない奴だから、友達はいない。 だから休み時間は人気のない旧校舎の水飲み場で過ごす。 ずっと水道の水で手を洗って過ごす。 何も考えないようにして、ただ水流に手をかざしていると、不思議と落ちつく。 友達なんかいなくてもいいよなあと思う。 ――大槻ケンヂ『新興宗教オモイデ教』 (だだっ広い 空き地で 何かを いじっている ほむら) ……いつも 夢に見る 女の子が いる (それは 爆弾である) (爆発する爆弾) その子が だれなのか わたしとどんな 関係なのか それは 分からない けれども わたしは その子に 会ってみたいと 思う それさえ 叶えば 死んでしまったって 構わないと 思う…… (ほむらの 後ろにいる まどか) (ハッと 顔を上げると そこには まどかではなく マミさんがいる) いい 爆弾ね ……な なんですか あなたは あの子は…… どこへ行ったんですか? あの子? ピンク色の コアラみたいな…… 髪をした…… ……まどか様ね? あなたにも まどか様が 見えるのね? ええ……? 趣味で 作っているのかしら? 爆弾を? ……ええ きらいな人が いるから? ……いえ ただ ただ イライラしていて…… 鬱憤を 何かを こわすことで 晴らしたいと 思っていて…… ねえ あなた まどか教に 入らない? ……まどか教って なんですか? *** まどか教は 来るべき 聖戦に 備えるための 軍団よ いつか…… 近い将来 いつか世界は 第三次世界大戦を迎えるの でもそれは 兵器を使った 戦いではないの 暁美さん 精神的な…… わたしたちの 霊的(アストラル)な力を使った 戦いに なるのよ そこで世界は 悪しきものと 善きものとにわかれて 戦うの そこで 最終的に どちらが勝利するのかは 今はまだ 誰にもわからない わたしたち 善きものが 勝利することを 願っているけれども…… でも悪しきものたちは 軍団を作り 国家を傀儡にし わたしたちを 追い詰めようと 常にたくらみを しているわ 見て あの電線 風に揺れないでしょう? ええ…… あれは 電線に 盗聴器が 仕掛けられているの わたしたちの 会話を 盗み聞きしているのよ でも安心して この秘密のアジトは わたしたちの 結界で 守られている だれにもここは 見つかることは ないわ だから安心して 暁美さん あなたの思いを 打ち明けて いいのよ ……辛かったのね 暁美さん ええ……? 分かるわ 善きものとして 生きていくには この世界は あんまり 悪しきものが 多すぎるわよね わたしたちは ただ 平和に 暮らしたいだけなのに でも わたしたちが 生きているという それだけで わたしたちを 憎悪する 悪しきものが いるものね ねえ 昨日 タバコの ポイ捨てをしている人を 注意したわ そしたら その人は わたしに向かって 暴言を 吐きかけたの 許せないわよね 暁美さん? もちろん その人には あとで魔法を かけてやったわ 苦しんで…… 苦しんで 苦しんで死ぬような 魔法をね 自分勝手な 悪しきものが 多すぎるのよ そう思わない? 暁美さん? ……ええ…… 前置きが 長くなったわね まどか様に 惹かれて あなたはここへ 来たのよね? あの子は…… まどか様って 言うんですか? そうよ 暁美さん あなたは まどか様を 知っているの? ええ…… そうです 小さい頃から いつも 夢に見ていて わたしは その人が 誰なのか 分からなかったのですが でもいま やっと 分かりました よかったわね 暁美さん きっとそれは 運命よ あなたの いつかあなたは まどか様に 会う運命だったんだわ 少し待っていて 新しい 魔法少女を 受け入れていただけるか どうか まどか様に 伺ってみるわ 「魔法少女」? そう わたしたちは わたしたちを そう呼んでいるの 来るべき 聖戦に 備えるための 善きものの軍団…… それが わたしたち 魔法少女よ まどか様 まどか様 よろしいですか ……いいわ 暁美さん 中へ 入って ……ああ まどか様だ わたしがいつも 夢に見る あの人だ…… まどか様よ まどか様は 普通の女の子に 見えるけれども でもこの御方は あらゆる時間 あらゆる次元に 同時に存在して すべての善きものを 守っていてくれるの 善きものが 悪しきものに なってしまわないよう わたしたちがもし 道を踏み外しそうになったら まどか様は わたしたちを 助けてくださるのよ ……そうですか あの 巴さん マミでいいわよ 暁美さん ……あの マミさん まどか様と 二人で お話ししたいのですが…… 残念だけれど それは まだあなたには できない相談だわ まどか様は 日夜 悪しきものと 戦っているから いつもお疲れなの だから まどか様に まみえることが できるのは わたしたちの中でも もっとも強い 戦士たち だけなのよ わたしたちには ご尊顔を 拝見することしか できないわ そうですか…… だからね 暁美さん あなたは 少しでも早く 魔法少女として 立派な活躍を してほしいわ 暁美さん 早速だけれど 魔法少女として 最初の仕事 悪しきものを 滅ぼす 最初の仕事を お願いしたいわ ……なんですか 今度 〇〇公民館で 〇〇の 講演会があるのよ 彼は 悪しきものの 手先として 日夜 世界中に負の力を 振りまいているの そこで 暁美さん あなたには 〇〇を 公民館ごと 爆破して 欲しいの あなたのその 爆弾でね ……爆破すれば まどか様に 会えますか ええ 会えるわ きっと 会えるでしょう ……分かりました *** 公民館が 爆発している *** (新聞記事を見ている) すごいわ 暁美さん あなたの 爆弾は 高性能ね ……ええ 研究 しましたから すごいわ わたしたちの 組織でも なかなかそんな強力な 爆弾は 作れないわ…… 組織? いい 暁美さん 次はこの人よ この人の 自宅を 爆破するの できる? ……それで まどか様に 会えるのなら…… *** 爆破する *** いけないわ 暁美さん どうしたんですか マミさん このアジトの場所が 悪しきものに バレてしまったの 連中は 警察とも つながりがあるから じきに大勢の 警官が ここへ 押し寄せてくるわ…… 時間の問題よ わたしたちは 捕まるんですか 大勢の…… 人を 殺したから 違うわ 暁美さん わたしたちが 殺したのは 悪しきものよ 人間では ないわ だからどんどん 殺しても いいのだけど 普通の人には そんなことは わからないわ 殺人罪で わたしたちを 捕まえようと しているんだわ…… どうすれば いいんですか ここを 爆破して 暁美さん そして 一旦 引きましょう ……逃げるんですか ええ そうよ 暁美さん しかたがないわ 早くしないと 連中が…… 爆発音 ……しまった! 連中は なりふり構わずに わたしたちを 始末する気よ 暁美さん! 早く…… 早く逃げなければ……! マミさん! まどか様が まだ……! まどか様は 放っておきなさい! え…… でも…… どうせそれは ホログラムよ 暁美さん! 本物じゃ ないわ! え…… マミさん…… ほんとうの まどか様は……? 暁美さん ほんとうの まどか様はね もうとうの昔に 円環の理に 導かれて 行ってしまったのよ…… つまり 亡くなられたのよ ずっと 昔にね…… え…… (爆発音) 早く! 暁美さん! そんな…… それじゃあ もう まどか様に 会うことは できない……? (銃声 ふたりとも 打たれる) きゃあ! マミさん! 暁美さん…… 早く…… 爆弾を…… マミさん 嘘をついて いたの? まどか様に 会えるって…… 嘘を…… ……いいえ 暁美さん まどか様には 会えるわよ いつでも わたしたちの…… 心のなかでね…… *** これは 世界を滅ぼせる 爆弾だ わたしたちを みんな 滅ぼせる 爆弾だ 善きものも 悪しきものも すべてまとめて 吹き飛ばせる…… (後ろに 誰かが 立っている 人影だけが 見える) 「ほむらちゃん」 (爆弾が爆発する)